(この記事は2014年6月9日に「一福」HPに書いたものを、こちらのブログに移行したものです)
40代、広島在住の女性の方。
ネットでの検索で当院がヒットし、ご来院されました。
20年前から<甲状腺機能亢進症>に悩まされ、投薬治療を続けられていましたが今はそれもやめ、放射線ヨード治療に切り替えているとのことです。
そしてその亢進症からくる<右手の震え>がひどく、文字をまともに書く事も出来ないとのこと。
他にも右側の首こり・肩の<れき音(肩を回すと鳴るゴリゴリ音)>にも悩まされており、右腰にもハリがでているとのことでした。
カイロや気功など、様々な療法を試みても改善なかったとのことです。
初診の方に書いていただくカルテも、左手で懸命に書いていただきました。
この手の震えを引き起こす<甲状腺機能亢進症>について、まずご説明します。
<甲状腺>とは、からだ全体の新陳代謝を促進するホルモン(甲状腺ホルモン)を出すところです。
喉ぼとけの両側に一個ずつあり、真ん中でつながっています。
<甲状腺機能亢進症>とは、この甲状腺ホルモンが出すぎる病気です。多い症状は、
甲状腺が腫れる、頻脈(脈が速くなる)、汗をかきやすくなる、たくさん食べるのに痩せる、イライラする、疲れやすい、たまに手足に力が入らなくなる・・・、などです。
そういったなかの一つである神経性の症状として、「手の震え」があります。
こうした甲状腺亢進症の治療は、大きく分けて以下の三つです。
①内服療法(甲状腺の働きをおさえる薬(大きく分けてメルカゾール・プロパジールの二種)を飲む 治る割合は2年間内服して30%程度とも)
②外科療法(手術で甲状腺を切る 治る割合は40-60%とも ただし手術後も薬を飲み続ける必要も)
③放射性ヨード内服療法(カプセル入りの放射性ヨードを内服。そのヨードは甲状腺にとりこまれ、大きくなりすぎた甲状腺を放射線で焼いて機能を抑える 治る割合50%とも)
治療の手順としてはまず①を試み、後に②③に移行するのが一般的のようです。
このクライアント様は先にもお伝えしましたように、①で効果がなく、現在③の段階に入られているようです。
以上にご説明した甲状腺機能異常からくる症状、一見整体では改善が難しいように思われます。
ですがこういった整体不適応な症状にも、リフレパシー整体は対応することができるのです。
そのおおきなポイントは<星状神経節>という「交感神経(=身体のはたらきを調整する自律神経の一つ。星のような形をしている)の集まり」です。
一口に「交感神経の集まり」といいましたが、ざっと言っても頭・顔・首・腕・胸・心臓・気管支・肺・・・、
身体の多くの部所を支配する交感神経の集まる大事なところです。
いわば、“星状神経節=交感神経のツボ”とイメージしていただけると分かりやすいでしょうか。
この<星状神経節>は首の付け根(≒のど)あたりにあるのですが、
とても深いところにあるため、従来の整体法ではここまでアプローチするのが極めて難しいです。
ですがリフレパシー整体であれば、外からゆっくりと持続圧をかけることにより、この神経の緊張を緩めることができるのです。
そして手の震えをはじめとする甲状腺亢進症の症状は、
「甲状腺の細胞の表面にある<交感神経β受容体>が増える(交感神経がより一層刺激されやすくなる)ためにおこる」
とされていますので、
“交感神経のツボ=星状神経節”を緩めることで、こういった症状を改善することに繋がる、ということになります。
(病院でもペインクリニックなどで注射によって、「星状神経節ブロック療法」を実施しているようです)
以上のようにリフレパシー整体の理論上、十分対応可能ですので、あとは実際の施術ということになります。
120分というお時間を頂きましたので、全身を施術させていただきながら、重要な箇所をピンポイントで入念にアプローチすることができます。
ポイントの筋肉は、星状神経節の外側を覆う首の筋肉、
◆胸鎖乳突筋
◆斜角筋
と判断し、ここに時間をかけました(案の定、この二つの筋肉は相当固かったです)。
そしてこの二つの筋肉は、甲状腺そのもののすぐ近くを通っておりますので、ここを緩めることで<星状神経節>の緊張を解くことができるだけでなく、
甲状腺への血流等を回復させることもでき、栄養を行き届かせることで、甲状腺機能の正常化も図ることができます。
そして「手の震え」と共に訴えられていた「肩のれき音(回すとゴリゴリ音がする)」にも対応。
この音を出す原因となる生み出す筋肉が三ヶ所あるので、そこを入念にアプローチし、施術をフィニッシュ。
術後、「手の震え」にすぐに改善感がでるはずもありません。通常は時間差で改善が出てくるとはお伝えしましたが、
クライアント様の表情や反応から判断して「これは二回目のご来院は無いだろうな・・・」と密かに思いました。
「力不足だったか・・・。他に自分に見落としは無かっただろうか・・・」と反省することしきりでした
(失敗例を後々まで引きずることは無いですが、自分の判断やアプローチに対する反省は多々あります)。
そう思っていた数日後、この方よりメールを頂きました。
「右手の震えは相変わらずだが、肩の音は全くしなくなった。少しずつだが効果が出てくるのではないかという思いがある。次回も施術を希望したい」
とのことでした。
次は難しいかな、と思っておりましたのでメールを見たときは何より嬉しかったです。
それ以上に「右手の震え」自体には改善がでていないので、何としても症状に変化がみられるようにしなければ、という思いで二回目の施術に臨みました。
二回目は60分施術ですので、上半身を集中的に処置します。先に書いたように首周りの筋肉を重視したアプローチをしました。
それから約一週間後、
「なんとなくだが、明らかに書きやすくなった。ずっと震えで字を書くこともできないほどになっていたのに、違和感はあるものの、少し書くこともできるような感じ。何回か通えば、なんとか書けるようになるような気がしています」
というメールをいただきました。
それからさらに10日後、三回目の施術前のプレカウンセリングでは、
「最悪期の6割ほどまで症状が軽減している」
とのことでした。
三回目の施術では従来の首だけでなく、
「パーカッション・ハンマー(細かい振動によって筋肉や関節を緩める道具)」を使って、腕から手指にかけても入念にアプローチをかけました。
そして一週間後。四回目の施術前のプレカウンセリングでは、
「少しではあるがさらに改善し、5割ほどに症状がおさまっている」
とのことでした。
四回の施術にして半分まで症状が軽減できたことは、自分の予想を上回る改善スピードでした。
その後も不定期に施術をさせていただいておりますが、自分の横浜出張で施術間隔が大きく空くこともあり、
劇的な改善はみられずに最悪期の半分程度にとどまっていますが、
四回目の施術後にあった血液検査では、薬無しで甲状腺の検査数値が正常範囲内におさまっているとのことでした。
今後も粘り強く、引き続き首・腕・手指に関するアプローチを続けていきたいと思います。
この方は20年間も甲状腺亢進症からくる「手の震え」に悩まされてこられました。字の書けない苦しみは、想像するだけでもつらいことです。
その苦しみが半分になっただけでも、だいぶ生活感が違うと喜んでいただけました。この症状の根治にむけて全力を尽くします。
日本内科学会(2010年)によると、検診にて甲状腺機能異常をみとめる(何らかの異常値をしめている)人が
・成人男性14.4%(七人に一人)
・成人女性24.7%(四人に一人)
とされており、これが事実であれば数百万・あるいは一千万単位のオーダーで潜在的な甲状腺疾患の患者がいる、ということになります。
疫学調査では、こうした数値に異常が出ているのに本人がほとんど異常を感じていない方がかなりいるということで、注目されているようです。
こうした膨大な人数におよぶ可能性がある、甲状腺機能異常からくる様々な症状にも、自分がしっかりお応えをしていこうと思っております。